輝薫

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紫を吐く(煙草シリーズ5)

 コンビニで貰った試供品の煙草は俺が愛煙しているのもと同じ銘柄だ。パッケージのデザインは殆ど変わらない。ただ一目で分かる通り、色だけがガラリと変わっている。購入した赤い箱と貰った青い箱を並べて置いてみると、驚くまでもなくそっくりで、驚...
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口寂しいを口実に(煙草シリーズ4)

 普段なら自宅で平気に吸っているが、人が来ているなら話は別だ。しかも居るのは数日前から禁煙しだした桜庭だ。風呂から上がったら部屋中に煙草の匂いが満たされていたら、とてもじゃないが気分のいいものでは無いだろう。せっかく恋人が来ているのに、...
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新しい日常(煙草シリーズ3)

 桜庭と屋上で殴り合ったのも、もう随分と前になる。肩身の狭い喫煙者のオアシスである屋上で、彼に出会うことはあっても、一緒に訪れることは滅多にない。理由は簡単だ。桜庭が一緒に来たがらないからだ。今日も一人で階段を上がる。レッスンが始まる...
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小さな痕跡(煙草シリーズ2)

 吸っているのかふかしているのか、天道自身もよくわかっていない。「おそらく肺に入っている」 呟いてみても反応が返ってくるわけがない。一人暮らしはどうにも独り言が増える。正面のテレビの中では先輩であるJupiterが司会者と軽快なトーク...
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結局はただ見とれてただけ(煙草シリーズ1)

 ストーカーまがいの嫌がらせをされたとか、後ろから突き飛ばされたとか、そんな話はよく聞かされてはいた。でもそれは、弁護士は良くも悪くも人の人生を変える仕事であることを忘れるなって伝えたいから聞かせるのであって、所詮は教訓みたいなもので...
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終わりよければ全てよし?

 やたらと重たい紙袋を床へ置いた。三階のボタンを押し、左手に持っていたスーパーの袋も足元へ置く。過ごしやすい季節になったな、と天道は思った。時刻はもう少しで九時を迎えようとしている。家庭用ゲーム機が入った紙袋と、昼食用の食材と間食用の...
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輝ける星二つ

 気象庁が東京都の梅雨入りを発表したのは一週間前のことだった。今夜も厚い雲に覆われており、小さな雨粒が降り注いでいる。ソファに座って台本を読んでいる桜庭の顔に向かって、隣に座る天道が手を伸ばした。「邪魔なんだよなあ」 そう呟いて天道は...
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泡沫人にあらず

 桜庭が唐突に、桜の木の間をすり抜けるように立ち去っていくのが見えた。特別目で追っていたつもりはない。しかし偶然目についたその姿に何故か俺は不安を覚えた。手に持った缶を置いて追いかける。ひしめくようにそびえ立っている桜の木の間を早足で...
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見えない人まで救ってしまうのがヒーローの条件

 昔、桜庭に「好きだ」と言った男性が居た。当時の桜庭はその事実にただ驚くばかりだったが、今となってはその勇気を称えるばかりである。  体調を崩される方がよっぽどの損害です。電気代など気にしないので、冷房も暖房もきちんとつけてくだ...
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ねぼすけはサンタクロースになんかなれない

 315プロダクションのクリスマスパーティは今年も大成功に終わった。天道はその夜、桜庭の手を引いて帰った。人の集まりは楽しさを作り出すが、同時に体力も奪っていく。 先に風呂に入った桜庭は、天道が風呂からあがるより少し先に眠りに落ちてい...